KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2025のご案内
- 2025.04.11
- ニュース
【KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2025】が両足院にて開催されます。
KYOTOGRAPHIE 2025 京都国際写真祭
会期
2025年4月12日(土)-5月11日(日)10:00–17:00
休館日: 4月19日・20日・30日、5月7日
※入場は閉館の30分前まで
作品
Eric Poitevin
エリック・ポワトヴァン
両忘—The Space Between
Presented by Van Cleef & Arpels
セノグラファー:小西啓睦
写真家エリック・ポワトヴァンは、生まれ育ったフランス北東部・ムーズからほど近いムルト=エ=モゼル県を拠点に独自の写真世界を切り取る。1980年代半ばより西洋古典絵画の典型的な題材を取り上げながら、独自の様式と時間性をもって緻密に構成された写真を生み出し続けてきた。屋外で撮影された風景、とりわけ森林の写真は、地平線を限りなく排除し、繁茂した植物が作品画面を全面的に覆う。過剰な演出や照明効果は削ぎ落とされ、完璧に構成された画面において植物の形態と成長過程がそのまま提示され、鑑賞者は森に導かれるようにその時空間に対面できる。一方、スタジオの白い背景を基調とした肖像や静物画は、余白を最大限に活かし、その抽象化された時空間において主題の人物やモノが、画面に穴を開けるかのように出現する。特に枯れつつある植物の枝が直立する静物画や、玩具や果実とともに頭蓋骨を一直線に並べたヴァニタスは、有機物が生命力を失い、無機物の界へと移り行く曖昧な領域を捉えている。
ポワトヴァンの作品、とりわけスタジオで撮影された写真は、被写体を彫刻的に捉えながらも、常に写真の平面性を意識している。その結果、遠近法によるパースをほとんどかけず、真横や真上から撮影された写真が多い。その効果をさらに強化するように、主に方向性をつけない照明の使用で過度な陰影を避けることによって、被写体のなかで優劣をつけることもなく、モノが持つそれぞれのかたちや存在がありのままで表現されている。
展示タイトルの「両忘」という禅語は、世の中を分断する物事の二面性を忘れること、両側面の対立を忘れることを示している。ポワトヴァンによる「両忘」は、対極にある要素を忘れるというより、長い年月をかけて緻密に構成した配置によって、独自の時空間を設け、現実の対立から解放された、新たな目線を我々に訴えかけている。
文:大澤 啓(東京大学総合研究博物館特任研究員)
詳細はこちらで確認をお願いいたします。
期間中茶会、呈茶が催されます。詳細、ご予約はこちらよりお願いします。